今やほとんどのビルに付いているパッケージエアコン。
室外機も大型化が進み、昔であればターボ冷凍機で冷水作ってたような規模の空調システムもビルマルチシステムとして空調の主役になりつつあります。
しかしパッケージはどうしても故障が付き物です。
特にビルマルチの室外機故障はエリア全体が一括で空調不能になるため、テナントやビルオーナーからのクレームも大きくなるでしょう。
ただパッケージエアコンの修理は凄く時間が掛かります。
今回は何故パッケージの修理にやたらと時間が掛かるのか、解説していきます。
短時間の修理で済む故障
パッケージエアコンの故障全てが時間を要するわけではありません。
基本的に「冷凍サイクル」そのものに関わるかどうか、冷媒を扱う必要があるか無いかで大幅に時間が変わってきます。
例えばサーミスタ(配管などの温度を測るセンサ)の交換やドレンポンプユニット交換、ファンモータの交換などは、ブレーカー断だけで作業に取り掛かれるので比較的早いです。
対して圧縮機の交換、電子膨張弁の交換、冷媒漏れの対応などはかなり時間を要します。
冷媒に関する基礎知識
話を進める上で、確認しておくべきこととして
「冷媒は地球環境において有害な物質である」
「法律において冷媒の大気放出は厳しく禁じられている」
という点があります。
修理のためとはいえ、冷媒を大気中に放出するのは基本的にNGなのです。
また「冷媒は大気圧下においては瞬時に蒸発する」という特性もあります。
R410冷媒を例にとれば大気圧における沸点はマイナス37℃です。
冷媒が関わると何故時間が掛かる?
パッケージのシステムは室内機と室外機で構成されていますが、冷媒の流れを閉鎖出来るのは室外機側に付いている「閉鎖弁」と呼ばれる部分だけです。
そのため、冷媒管の何処かを取り外す=冷媒が漏れ出す可能性のある作業をする際には、ガス閉鎖弁~液閉鎖弁の間に冷媒が全て入るようにしなくてはいけません。
これをポンプダウンと言い、室外機の中にある「受液器」という部分に冷媒を集めます。室内機側に残っている冷媒もポンプの圧力で引っ張ってくることになるので、当然ですが冷媒の量に応じて時間が掛かるのは言うまでもありません。
ただポンプダウンで対応出来るなら、まだマシで問題は室外機内で冷媒に絡む部分を開けなければならないケースです。
室外機側の部品交換は「冷媒回収」
ポンプダウンで対応できない場合は一度冷媒を回収しないといけません。
冷媒を吸い出せるポンプを持って来て、系統内から冷媒を全部引っ張り出さないと作業に取り掛かれないのです。
これが結構時間を食います。
いわゆる室外機1台に対して室内機が1台のルームエアコンみたいなタイプなら冷媒も数kg入っているくらいなのですが、これがビルマルチとなると数十kgはザラです。
数十kgの冷媒を配管内から全部吸い出すのはかなり時間が掛かる上に、当日の気温の影響も受けます。
夏の暑い日の場合は、吸い出した冷媒を溜めるタンクが加熱されて内部圧力が上昇→ポンプがその圧力に逆らって冷媒を押し込むので効率が落ちる。
逆に冬の寒い日は受液器内の冷媒がすぐに冷えて流動性が落ちてしまい、なかなか出てこない(冷媒が寝込んだなどと言います)
容量を基にある程度の予測は出来ますが、実際のところ「やってみないと分からない」ことも多いのです。
また作業後は当然、冷媒を再充填しますので、これにも時間が掛かります。
そして冷媒を再充填したらすぐに試運転に移れるかというと、そうもいかず。
ブレーカーを投入後しばらくは冷えた機械を暖める「加熱」の時間が必要なのです。
これが終わってやっと試運転に移れます。
まとめ
まとめますと
- パッケージの故障は冷媒に関する作業の有無で時間が大きく変わる
- 特に室外機側で冷媒管を取り外す場合には、冷媒回収が必要なので時間を大幅に使う
- 冷媒回収や再充填は気温の影響を受けやすい
- 作業そのものよりも冷媒回収や再充填に時間が掛かっている
- 冷媒は無闇に漏らすことが出来ないので、回収や再充填は企業の義務
特に圧縮機の交換は非常に時間を要するケースが多いので、予防保全としての交換を検討するのも十分ありかと思います。
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