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最近のオフィスビルでは、ボイラーや冷凍機は持たないところが増えています。

特にボイラーは有資格者の選任だったり、1年に1度のボイラー協会による法定点検だったりと、何かと法律の縛りが大きく手間と費用が掛かるためです。

その代わりに設置されているのが、チラーやバコティンなどと呼ばれる設備ですが、経験の浅いうちは何が何やらと思うのではないでしょうか。

今回はこれらの熱源設備を解説していきます。

ヒートポンプ

ヒートポンプは「熱(ヒート)を運ぶポンプ」全般を指す言葉で、特に冷媒による冷凍サイクルを利用したものをヒートポンプと呼称します。

一番分りやすいのはパッケージ型エアコンです。

あれは室内機と室外機の間で「熱を移動」しているわけですので。

本来、熱は高音から低温にしか動きません。これは熱力学の基本法則です。

しかし、それでは外気温度が30度の日に、室内をそれ以下に保つことは出来ないので、冷媒を圧縮したり減圧したりすることで、強引に熱を外に捨てることが出来るようになる。

この仕組みを「ヒートポンプ」と呼ぶのです。

また近年では、後述するチラーの他に「エコキュート」と呼ばれるヒートポンプ型の温水器も多く見られます。

これも本来、水の温度は外気温度と同じ温度にしかならないのを、冷凍サイクルを利用して強引に加熱するものです。

チラー

従来、主に冷房用熱源として使われてきたため「冷やす」を意味する「チル」からチラーと呼ばれていますが、近年は冷暖兼用型も多く見られます。

先ほどのヒートポンプを利用して、空気ではなく水を冷却・加熱するためのものになります。
なので「水を冷却・加熱するためのエアコン」とでも言いましょうか。

大半のビルでは空冷式ユニットが採用されています。

空冷式はエアコンの室外機と一緒で、冷却または加熱した水から移動する熱は放出されるため、一般に屋上へ設置されているものが大半です。

水冷式は大出力が求められる場合なので、ビルメンで担当するようなビルではああまり見かけませんが、この場合は「冷水を作るチラーを冷やすための冷却水」が必要となるので、一般にはクーリングタワー・冷却塔も併設されます。

バコティンヒーター

主にセントラルの給湯設備(貯湯槽+循環)を備えてる建物で、近年主流になりつつある熱源設備です。

真空式温水器・潜熱回収型温水器などが正式名称かと思いますが、この型式を初めて実用販売した日本サーモエナー社の製品名で「バコティンヒーター」の名称が定着しています。

従来のボイラーは燃料を燃やした高温の燃焼ガスで蒸気を発生、または温水を作ることで、それを熱源としていました。

バコティンヒーターも燃料(主に都市ガス)を燃やして、その熱で蒸気を発生されるところまでは一緒なのですが、発生した蒸気は外に出て行かずに全て真空が保たれた缶内に留まります。

貯湯槽から送られた湯は蒸気で満たされた缶内を通りますが、蒸気と比較して湯の温度は低温です。
そのため、湯に配管を通じて触れた蒸気は液体に戻ろうとしますが、この際に蒸発熱=潜熱が湯の方に放出されます。

バコティンヒーターは湯が、この潜熱を受け取ることで加熱させる原理のヒーターです。

水の潜熱は非常に大きく大気圧で2257kJ/kg、水1kgを100℃まで加温するのに必要なエネルギーよりも大きな値を取ります。
熱交換効率を単純に100%と考えれば、100℃の蒸気1kgの潜熱で、水10kgの温度を52℃上げるだけの熱量に匹敵するのです。
(実際はこんな簡単な計算にはなりませんが)

バコティンヒーターの利点は、缶内が大気圧以下(0.1MPa以下)で常に保たれるため、法令上「ボイラー」や「圧力容器」としての扱いを受けないことです。

圧力容器の定義
蒸気その他の熱媒を受け入れ、又は蒸気を発生させて固体又は液体を加熱する容器で、容器内の圧力が大気圧を超えるもの(労働安全衛生法施行令第1条)

そのため、定期検査や資格者の選任などが大幅に緩和されます。

今後、一般の中規模程度のビルなどでは、これがますます主流になるのではと思います。

ただしボイラーではなくてもガスや油を燃やして、その燃焼ガスを大気中に放出するため、ばい煙測定の義務は生じる点だけ注意が必要となります。

吸収式冷温水発生器

吸収式冷凍機と言われる原理を使って、冷水及び温水を製造する装置です。

ヒートポンプのように冷媒を使用せずに「濃厚な水溶液は水蒸気を吸収する」という原理を利用しています。

反面、水溶液から水だけを取り出す工程で蒸発させるために熱源が必要なこと(主に都市ガスなどの燃焼)、更に蒸発したものを冷却して一度水に戻すために冷却水も必要になること(一般にクーリングタワーが用いられます)から、全体としては大掛かりなシステムになりがちです。

ただし、燃焼システムを内蔵しているため、1台の機械で冷水・温水両方に対応出来るという利点はあります。

またバコティンヒーターと同じで、燃焼ガスを使用する関係から、ばい煙の測定は必要となります。

 

最近のビルでは、ボイラーや冷凍機などの資格試験で扱うような昔ながらの設備は逆に稀少になってきました。

新しい設備を積極的に勉強する必要があると常々思います。